印刷する 印刷する

有報のCG状況の虚偽記載に初の課徴金、上場会社が今とるべき対策

周知のとおり、2018年6月に金融庁から公表された「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」(以下、「WG報告」)により有価証券報告書(以下、有報)における記述情報(*1)の充実を図る方針が固まり、この方針を踏まえた改正開示府令が2019年1月31日に公布・施行されたところだ。改正開示府令は既に2020年3月期の有報から全面適用(*2)されているが、それに先立ち2019年3月19日には「記述情報の開示の好事例集」と「記述情報の開示に関する原則」が公表されている(「好事例集」と「開示原則」については2019年3月22日のニュース『金融庁が「好事例集」と「開示原則」公表、記述情報充実に向けた環境整う』参照)。さらに金融庁は、2019年12月20日に「記述情報の開示の好事例集」を更新するとともに、2020年2月5日から「記述情報の開示の充実に向けた研修会」を全国で開催し、記述情報の開示の充実を支援するなど上場会社の開示支援に力を入れている。

*1 有報の第一部【企業情報】の第2【事業の状況】における【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(いわゆるMD&A)、第4【提出会社の状況】の【コーポレート・ガバナンスの状況等】等の記述情報を指す。記述情報は、「企業の財務状況とその変化、事業の結果を理解するために必要な情報であり、①投資家が経営者の視点から企業を理解するための情報を提供し、②財務情報全体を分析するための文脈を提供するとともに、③企業収益やキャッシュ・フローの性質やそれらを生み出す基盤についての情報提供を通じ将来の業績の確度を判断する上で重要」(WG報告2ページ)とされている。
*2 【コーポレート・ガバナンスの状況等】の【コーポレート・ガバナンスの概要】において任意で設置する委員会の「権限」や「構成員全員の氏名」を記載することを求める改正、【株式の保有状況】において保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式についての保有方針および保有の合理性を検証する方法を記載することを求める改正など、先行して2019年3月末決算の有報から開示が求められている改正項目もある(2019年3月末決算の有報から適用される改正項目の内容や実際の開示の分析結果については、2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」や2020年1月8日【特集】改正開示府令の有報記載分析(役員報酬、政策保有株式 参照)。

MD&A : 「Management Discussion & Analysis」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

金融庁が力を入れているのは「支援」だけではない。先月(2020年1月)31日には有報【コーポレート・ガバナンスの状況等】の虚偽記載で初の課徴金事例が公表されており、改正開示府令が全面適用される2020年3月期の有報の開示に先立ち“鞭”を振るう姿勢も示している。・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから