従業員に多様な働き方を実現するため副業を認めることを検討中の企業は少なくないが、いざ副業を認めるとなった場合にネックとなるのが、副業時間も含む労働時間管理の難しさだ(2019年7月26日のニュース「副業先での労働時間を通算しない案が浮上」参照)。労働基準法上、従業員が複数の企業(事業主)の下で労働する場合は、労働時間を通算(本稿でいう「通算」とは、各事業主の下での労働時間を合計することを指す)しなければならないが、副業時間が多い場合、労働者にとっては人事部門等への申告に手間がかかるうえ、自社および他社の双方において所定外労働(所定労働時間を超える労働)がある場合、それはどの事業主の下での残業となるのかの判断や、両事業主の下での労働時間を通算した時間が労働基準法上の労働時間規制(*)を超えないようにするためにはいかにして労働時間を管理すべきかといった労働時間の「通算管理」の難しさがある。
所定労働時間 : 労働者が働くこととなっている時間のこと。通常は、就業規則や雇用契約書に記載されている始業時間から終業時間までの時間から休憩時間を差し引いた時間のことをいう。例えば始業時間が午前9時、終業時間が午後7時、休憩時間が1時間であれば、所定労働時間は「7時間」となる。労働時間の限度を意味する「法定労働時間」とは異なる。
* 副業する労働者と先に労働契約を締結していた事業主(以下、「使用者A」という)の事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を締結した事業主(以下、「使用者B」という)の事業場における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)を合計した時間数が単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内に収まる必要がある。
労働時間の通算管理の難しさを理由に従業員の副業を認めることを躊躇している企業にとって参考になるのが、・・・
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