印刷する 印刷する

コロナ禍で大量退職、巨額退職金を分割払いする場合の法的留意点

かつて、経営不振に陥った大手メーカーが希望退職を募集したところ予想をはるかに超える応募があり、割増退職金を分割払いせざるを得なくなったことがあったが、コロナ禍がこれ以上長期化すれば、一部の上場企業で同様のことが起こる可能性も否定できない。実際、従業員の大量退職(解雇を含む)にあたって「退職金が支払えない」という経営者の声もちらほら聞かれるようだ。

もっとも、就業規則等で退職金を支払う旨が明文化されている場合は言うに及ばず、こうした明文規定がない場合であっても慣行的に退職金を支払ってきたのであれば(民法92条にいう「慣習」があったのであれば)、「支払わない」という選択肢はあり得ない。懲戒解雇のケースですら、「労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な背信行為がない限り退職金の不支給は許されない」とする裁判例(昭和47年4月28日名古屋地裁判決、平成15年12月11日東京高裁判決など)もある。

民法92条 : 民法92条(任意規定と異なる慣習)は、「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う」と規定している。

また、「減額して支払う」ことは、「退職金支払い債務の不完全履行」に該当する。就業規則を変更して退職金の計算式を変えるという(小手先の)手法も考えられなくもないが、まず労働契約法第10条に列挙された要件を満たすのはハードルが高いうえ、そもそも、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから