「独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会が立入検査」といった報道を目にすることは少なくない。もちろん、企業としては公正取引委員会(以下、公取委)の立入検査とは「無縁」であるに越したことはないが、コンプライアンスの取組みによっても独占禁止法(以下、独禁法)違反のリスクを完全に取り除くことは容易ではない。その大きな要因は、そもそも独禁法の違反要件が分かりづらいことにある。市場を画定(区切りを明確に決めること)する作業に加え、その市場において「反競争性」があるかどうかを判断することは、独禁法の専門家でも頭を悩ませることがある。ましてや、現場の社員の隅々まで独禁法違反の有無を認識できるようにすることは、よほどコンプライアンス系統がしっかりしている会社でない限り困難だろう。したがって、リスクマネジメントの観点からは、「いつ自社に立入検査が入ってもおかしくない」くらいの意識を持っておくことが求められる。
しかも、立入検査は、拒否した場合には罰金が科される間接強制*の調査であり、事前の予告なしに行われる。いきなり公取委の審査官が会社にやって来たことで混乱し、その後の訴訟等で不利になる対応をしてしまわないよう、会社としては公取委による調査の対象となった場合の対応方法をあらかじめ整理しておく必要がある。
* 一定の不利益を課すことにより、義務の履行を強制すること
立入検査が入った場合には、まず、被疑事実の要旨等を記載した「告知書」が交付される。告知書に書いてある被疑事実の要旨は立入検査の範囲を示すとともに、企業から見れば、その後の訴訟手続等における“防御活動”の対象を示しているため、これを正確に把握する必要がある。そのうえで担当者に話を聞いたり、資料を精査し、事実関係を把握することが会社側の対応の第一歩となる。
また、立入検査が入ったら、弁護士を立ち会わせ、立入検査の範囲や提出命令*の範囲などについて、適切なアドバイスを受けることが望ましい。意外と知られていないが、・・・
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