医薬品として承認されてはいない健康食品にあたかも脂肪肝改善効果があるかのように思わせる広告(LP記事)をウェブメディアに配信していたとして、広告主であるステラ漢方だけでなく、ウェブ広告を請け負っていた広告代理店のソウルドアウト(東証一部)の従業員も逮捕され、同社の親会社であるデジタルホールディングス(東証一部)で子会社上場の是非を問う株主提案につながったことは既報のとおりだが(2021年4月19日のニュース「従業員逮捕の余波で株主提案」を参照)、来月1日(2021年8月1日)からはこうした虚偽の広告により医薬品等の取引に関わった者に課徴金(*)を課す制度がスタートする。
LP記事 : 検索エンジンなどから流入した読者を製商品やサービスの購入に誘導するための読み物的なウェブページのこと。LPとは「Landing Page(ランディングページ)」の略で、最初にアクセスするウェブページのことを指す。
・独占禁止法(1977年導入)
・金融商品取引法(2005年導入)
・公認会計士法(2008年導入)
・景品表示法(2016年導入)
現在でも、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の広告が「虚偽」や「誇大」であった場合には、国民の保健衛生に大きな影響を与えるおそれがあることから、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称、薬機法)66条で、医薬品等の広告規制が定められている。
薬機法66条1項(誇大広告等) 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 |
ただ、薬機法66条に違反した場合の罰金の水準は最高でも200万円となっており、200万円の罰金を覚悟した事業者にとって、虚偽広告・誇大広告は“やり得”となっていた。そこで薬機法に75条の5の2(下記参照)が新設され、違法行為による経済的利得に対してペナルティを設ける課徴金制度が導入されることになったわけだ。
薬機法75条の5の2 1項 第66条第1項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第75条の5の5第8項において「対価合計額」という。)に100分の4.5を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。 2項 前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日 (同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。 |
課徴金の額は、「医薬品等の対価の額の合計額」に4.5%を乗じて“機械的”に算定される。この4.5%という率は医薬品・医療機器製造販売業者の売上高営業利益率を参考にして設定された。不正広告を垂れ流す事業者は、より高い利益率を実現している可能性があり、果たしてこの率で“やり得”を抑止できるのかとの疑問の声もあるものの、最長3年分の「医薬品等の対価の額の合計額」が対象となると、少なくとも課徴金を課された時点での損益に与える影響は大きいことは間違いない。また、独占禁止法と同様、リニエンシー制度(課徴金対象行為者が課徴金対象行為に該当する事実を厚生労働大臣に報告したときは、課徴金の額が半分に減額される)も用意されている。なお、「保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合」や「課徴金の額が225万円(すなわち売上が5000万円)未満であるとき」には課徴金は課されない。
売上高営業利益率 : 営業利益とは、いわば本業の業績を表す利益である。売上高営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合であり、売上高のうちどれくらいが営業利益として残るかを意味するため、売上高営業利益率が高ければ、本業が上手くいっていると言える。
改正薬機法で導入された課徴金制度の最大のポイントは・・・
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