印刷する 印刷する

創業者一族の“配当節税”にメス、税負担倍増も

「パブリックカンパニー」「社会の公器」とも言われる上場会社だが、実は同族色・オーナー色が強いところも少なくない。創業家一族が自社の株式を直接大量に保有しているケースもあるが、直接的な保有は抑え、創業家一族が支配する資産管理会社に保有させるケースも多い。その理由の一つとして、株式の保有に伴い受ける配当への税金の問題がある。

上場株式の配当については、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を完結させることが可能とされている。ただし、持株割合3%以上の“大口”の個人株主の場合、源泉徴収の税率は24.9%とされ、さらに上場株式に係る配当は給与など他の所得と合算され「総合課税」の対象となる。総合課税では、所得が増えれば増えるほどより高い税率(最大49.44%)が課されることになる(これを「累進課税」という)。

こうした中、上場会社である自社の株式は資産管理会社に保有させ、個人株主としての持株割合は3%未満に抑えるという節税が広く行われているという実態がある。この問題は、会計検査院が令和3年11月5日に公表した「令和2年度決算検査報告」でも指摘されている。実際、会計検査院の報告によれば、持株割合3%以上の大口の個人株主の所得税等の負担割合は原則どおり24.9%であるのに対し、同族会社(資産管理会社等)を通じて3%以上の上場株式を保有している場合の負担割合は15.3%と低くなっている。

会計検査院 : 会計検査院は、国や政府関係機関等の会計検査を行うだけの機関と思われがちだが、税制改正においてもその“発言権”は大きい。会計検査院は、「会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合」には、本属長官等に対し意見表示等をすることができるとされ(会計検査院法34条)、これに基づき税制の問題点が指摘され、その結果、税制改正につながることが少なくない。

この指摘を受け令和4年度(2022年度)税制改正では、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから