2021年の日本の株式市場におけるIPO(Initial Public Offering=新規株式上場)社数は125社に達し、リーマンショック後の2009年の19社と比べると隔世の感がある。IPOの大きな目的は証券取引所(資本市場)を通じて資金を調達することにあるが、実は未上場企業がIPOせずに証券取引所に上場する方法も存在する。それが「ダイレクトリスティング(直接上場)」だ。
米国の最近の例では、音楽ストリーミングサービスのSpotify(Spotify Technology S.A.)やビジネスチャットツールを提供するSlack(Slack Technologies, LLC)がニューヨーク証券取引所への上場時にダイレクトリスティングを利用した。米国の場合、ベンチャー企業に対する資金供給が潤沢であるため、上場前に多額の資金調達に成功した企業の中には、資金調達のニーズはないものの株主に取引機会を与えるために上場はしたいという企業が少なくない。そのような企業がダイレクトリスティングを利用して上場することになる。
東京証券取引所(以下、東証)におけるダイレクトリスティング実施企業は杏林製薬(1999年4月上場)1社のみであり、その後20年以上も実施例がない(*)。こうした中、・・・
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