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給与支払を巡る確実なコスト削減

2023年4月1日から、賃金の「デジタルマネー払い」が解禁されている(改正労働基準法施行規則7条の2~7条の8)。もっとも、同日からデジタルマネー払いが可能となるわけではなく、現時点では「〇〇ペイ」といった資金移動業者が厚生労働大臣に「指定申請」を行うことができるようになったにすぎない。厚生労働省の審査をパスした資金移動業者は「指定資金移動業者」となり、企業から賃金のデジタルマネー払いを受託できるようになるが、厚生労働省によると、この審査には数か月かかる見込みだという。さらに、賃金のデジタル払いを導入しようという各企業は、どの指定資金移動業者を利用するのかなどを内容とする労使協定を締結しなければならず、そのうえで従業員が賃金のデジタル払いを希望する場合には、使用者(会社)に「同意書」を提出することで、ようやく賃金のデジタル払いが可能となる。既に賃金のデジタル払いを検討している企業もあるが、デジタル払いを実施するとなった場合、この同意書の取得のほか、デジタル払いを希望する従業員と希望しない従業員の峻別、さらには、デジタル払いの金額は1回の入金額の上限を「100万円」として労働者側が自由に設定できることから(デジタル払いの金額を全従業員一律としない限り)従業員毎のデジタル払いの金額を管理する必要が生じるなど、企業の事務負担は大きくなるだろう。このため、デジタル払いを実施するかどうか、実施するとしてもどのようなステップを踏むべきか、頭を悩ませている企業も多いものと思われる。

労使協定 : 労働者と使用者との間の合意のこと。労使協定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には当該労働組合と使用者、そのような労働組合がない場合には、当該事業場の労働者の過半数を代表する労働者と使用者の間で「書面」により締結する必要がある。また、労働基準法上、労使協定は「事業場ごと」に締結することとされているため、事務所や工場等が2か所以上ある場合には、各事務所、工場等ごとに締結する必要がある。労働基準法の36条に基づくいわゆる“サブロク協定”も労使協定の一つである。

一方、同じく給与支払を巡る問題で、・・・

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