総会シーズンを目前に控え、アクティビストによる株主提案が増えてきている。昨年の株主提案の数は76社290議案と過去最高を記録しており、今年もその数を更新しそうな勢いだ。その理由の1つに東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請があることは間違いないが(2023年5月9日のニュース『東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」引用した株主提案相次ぐ』参照)、そもそもの前提として、諸外国と比較した場合、日本の株主提案権が株主にとって“強力な”権利であることも背景にあると考えられる。日本の制度の特徴は、今後の株主提案の増減や中身の傾向を予想するうえでも、上場会社の経営陣が押さえておくべきと言える。
株主提案権には、①株主総会の議題の提案、②株主総会における審議議題に対する議案の提案、③株主総会招集通知に株主提案の議案の要領を記載するよう請求すること、の3種類ある。最近提案された議題・議案としては、例えば自社株買いや増配、取締役の選解任などのほか、気候変動などサステナビリティに関する定款変更を求める提案等も増えている。こうした株主提案権について米国、欧州と日本を比較した場合、日本の法制度上の株主提案のハードルが低すぎるのではないかとの指摘がある。
議題 : 例えば「取締役選任の件」のように、株主総会におけるテーマそのものを指す。
議案 : 議題に関する具体的な提案のこと。例えば「取締役〇〇××氏選任の件」といったものが議案に該当する。
株主提案に至るまでには、提案権を行使するために満たさなければならない要件と、行使できる提案内容に対する制限というハードルがある。まず、権利行使のための要件は、下表のとおり、欧州の英国、フランス、ドイツといった国の要件が厳しく、日本や米国が比較的ハードルが緩いと考えられる。ただ、米国ではかつての・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。