指名委員会等設置会社では、業務の執行は執行役に委譲されており、執行役は取締役会の構成員ではないが、会社法では、執行役に取締役会に対する一定の報告義務を課している。1つは“定期報告”であり、具体的には「3か月に1回以上」、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされている(会社法第417条4項)。もう1つは取締役会の要求があった場合の報告であり、この場合、執行役は取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければならないこととされている(同5項)。
このうち5項の趣旨は、取締役会の構成員ではない執行役は当然に取締役会に出席して取締役の質問に対して説明する義務を負うわけではないため、執行役に対する取締役会の監督機能の実効性を高める方策の一つとして、取締役会の要求に応じて執行役に出席を義務付けようということにあるが、業務に関する決定権は執行役にあるとはいえ、実質的に業務を実行するのは従業員であり、従業員の方が内容を理解しているというケースも少なくないだろう。実際、定期報告は執行役が行っているものの、取締役会の要求があった場合の報告においては従業員を報告者にしたいと考える会社もある。ただ、この場合に懸念されるのが会社法への抵触だ。
結論から言うと、まず執行役が取締役会から「取締役会への出席と説明を要求された場合」(会社法417条5項)には、当該執行役自身が説明者となる必要があり、従業員はその執行役の代理人として説明者にはなることはできない。もっとも、・・・
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