メーカーなどの親事業者が下請事業者に「金型」「木型」「治具」等(以下、金型等)を貸与し、製造終了後も(所有権は親事業者のまま)保管させ続けることは珍しくない。製造が一時的に中止となっても、需要が復活すればすぐに製造再開となる可能性があるからだ。下請事業者としても、型替えのたびに金型等を親事業者に返却したり、製造再開に伴い再度借り受けたりするのは手間となるうえ、製造再開時の再発注も期待できることから、よほどスペースがひっ迫していない限り保管に異議を唱えることはない。もっとも、金型等の保管により下請事業者の工場の一角は確実に占拠されるため、下請事業者に金型等を保管させるには、親事業者が下請事業者に適正な金型等保管費用を支払うことが大前提となる。
ところが、親事業者から金型等保管費用が支払われなくても、下請事業者は親事業者との力関係上、親事業者に対して同費用を請求しづらいのが現実だ。また、下請事業者が請求して来ないのをいいことに、製造再開の見通しがないにもかかわらず下請事業者に無償で金型等の保管を継続させている親事業者も少なくない。そこで下請法では、「不当な経済上の利益の提供要請」を親事業者の禁止行為の一つとし(下請法4条2項3号)、その具体例として「型・治具等の無償保管要請」を挙げている。
下請法4条2項 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(中略)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。 (中略) 3号 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。 |
【型・治具等の無償保管要請】 親事業者は、機械部品の製造を委託している下請事業者に対し、量産終了から一定期間が経過した後も金型、木型等の型を保管させているところ、当該下請事業者からの破棄申請に対して、「自社だけで判断することは困難」などの理由で長期にわたり明確な返答を行わず、保管・メンテナンスに要する費用を考慮せず、無償で金型、木型等の型を保管させた。 |
この金型等保管費用を巡り、最近、公正取引委員会が「下請法4条2項3号違反」として親事業者に対し立て続けに勧告を行っているので要注意だ。・・・
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