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女性管理職比率の開示義務化が既定路線に 適用対象拡大により子会社での開示が必要になるケースも増加へ

最近は女性役員が増えてきたとはいえ、その多くは女性「社外」役員であり、女性「社内」役員は圧倒的に少ない。経団連の調査によると、プライム市場上場会社とスタンダード市場上場会社の女性役員4350人のうち女性「社内」役員は615人(=取締役537人+監査役78人)に過ぎない。女性「社内」役員増加のためには、女性管理職比率を向上させ、女性社内役員の候補者(母数)を増やす必要がある。

女性管理職比率の向上は男女間の賃金格差の是正にも貢献する。女性活躍推進の主戦場は役員というパイの小さいレイヤー内での女性比率の向上ではなく、人数が圧倒的に多い管理職における女性比率の向上にあると言っても過言ではない。

そこで、女性活躍推進法に基づき作成が求められる一般事業主行動計画()では、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する公表対象項目の一つとして「女性管理職比率」が掲げられている。もっとも、現行ルール上、常時雇用する従業員の数が301人以上の企業であっても、開示が義務化されているのは「男女の賃金の差異」だけであり、「女性管理職比率」は任意開示の選択肢(8項目から1項目を選択して開示すればよい)の一つに過ぎない(下表「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画等に関する省令第19条第1項」の赤字参照)。実際、任意開示であることを理由に「女性管理職比率」を開示していない企業も少なくない。

* 女性活躍推進法に基づき、常時雇用する従業員が101人以上の企業に策定、都道府県労働局への届け出、社内通知および外部公表が義務とされている自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析およびこれを踏まえた行動計画(常時雇用する従業員が100人以下の企業は努力義務)。常時雇用する従業員が301人以上の企業は、「男女の賃金の差異」の把握および開示も義務となっている。


女性活躍推進法 : 女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進すること等を目的とする法律。同法では、企業や地方公共団体が女性活躍推進に関する行動計画を策定し、実施することを義務付けている。

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画等に関する省令第19条第1項
(法第20条第1項の情報の公表)
第19条
法第20条第1項の規定による情報の公表は、次の各号に掲げる情報の区分ごとに第1号イからチまで及び第二号に定める事項のうち一般事業主が適切と認めるものをそれぞれ一以上公表するとともに、第1号リに定める事項を公表しなければならない。
1 その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績
イ 採用した労働者に占める女性労働者の割合
ロ 男女別の採用における競争倍率
ハ その雇用する労働者及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者に占める女性労働者の割合
ニ 係長級にある者に占める女性労働者の割合
ホ 管理職に占める女性労働者の割合
ヘ 役員に占める女性の割合
ト その雇用する労働者の男女別の職種の転換又はその雇用する労働者の男女別の雇用形態の転換及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の男女別の雇入れの実績
チ 男女別の再雇用(通常の労働者として雇い入れる場合に限る。)又は中途採用(おおむね三十歳以上の者を通常の労働者として雇い入れる場合に限る。)の実績
リ その雇用する労働者の男女の賃金の差異

女性管理職比率の開示が義務化されれば、既に開示が義務化されている「男女の賃金の差異」と相まって、社外からはベールに包まれていた女性活躍の実態が衆目にさらされ、ライバル企業に劣後する企業の行動変容が期待されるため、開示の義務化を求める声が高まっていた。

こうした声の高まりを受け、・・・

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