役職員が転職する際にしばしば問題になるのが、営業秘密の持ち出しだ。マスメディアでも報道されているように、2025年2月3日には、タレントキャスティング会社に勤務する会社員が転職する際に芸能人の契約金などの営業秘密を以前の勤務先から持ち出したとして不正競争防止法違反容疑で警視庁に逮捕されたところ。2022年9月30日には、回転ずしチェーン店「かっぱ寿司」の運営会社カッパ・クリエイトの社長が転職前に在籍していた回転ずしチェーン店「はま寿司」の仕入に関する営業秘密を不正に持ち出したとして不正競争防止法違反容疑で警視庁に逮捕され、有罪が確定している。営業秘密の持ち出しは転職時の“手土産”として利用されやすく、これらの事件は氷山の一角と言われている。
タレントキャスティング会社、回転ずしチェーン店の両事例はともに不正競争防止法違反が逮捕の容疑となっていた。自社の営業秘密が同法に基づく保護を受けるためには、それが同法2条6項の「営業秘密」に該当しなくてはならない。
この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。 |
そして、同法2条6項の「営業秘密」に該当するためには下記の三要件を充たす必要がある。
【秘密管理性】秘密として管理されていること 【有用性】有用な営業上又は技術上の情報であること 【非公知性】公然と知られていないこと |
会社にとって営業秘密は競争力の源泉であり、従業員や産業スパイにより持ち出されないように厳重に管理するべきなのは当然だが、どんなに厳重に管理しても持ち出しを完全に防ぐことは難しい。そこで、万が一営業秘密を持ち出された場合の事後的救済措置として、不正競争防止法に基づき差止めや刑事罰を科すことができるようにしておくことで、営業秘密の持ち出しに牽制をかけておく必要がある。そのための対策を検討するうえで参考にしたいのが・・・
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