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売上の9割が虚偽 オルツの循環取引に専門家が騙された理由

AI関連スタートアップのオルツ(東証グロース)で、2024年10月11日の上場から1年を待たずして経営の根幹を揺るがす不正会計が発覚した。同社は2025年7月30日に民事再生手続きの開始を申し立て、翌31日には東証が同社株式の上場廃止を決定。上場廃止日は2025年8月31日とされている。

オルツが2025年7⽉29⽇に公表した第三者委員会の報告(差替版)によれば、驚くことに売上の約9割が虚偽であった。同社の手口は「循環取引」に類するもの。広告宣伝費として外部に支出した資金が別の協力会社を経由して同社に還流され、これを売上として計上するという構図だ。損益計算書上は売上と広告費が並び立ち、その差額にあたる手数料分(本循環取引に協力する他社が受け取る)が損失として積み上がる仕掛けとなっていた。これにより、2023年12月期は売上37億円に対し広告宣伝費を36億円、2024年12月期は売上49億円に対し広告宣伝費を44億円計上していた。


循環取引 : 特定の関係者の間で利益を乗せて売買を繰り返す取引。経済的実態の伴わない取引であり、最終的には関係者の利益が乗った高値で買い戻す必要があるため、粉飾取引の一つに位置付けられている。

オルツは「AI GIJIROKU(AI議事録)」を主力サービスとしているが、こういった文字起こしサービスは既に世の中に溢れており、無料で提供されているものも少なくない。そのようなレッドオーシャンとされる市場において、「AI GIJIROKU(AI議事録)」は法人向け年間220万円、個人向けでも年間1.65万円(無料もある)と強気の料金体系を採用していた。「このサービスにこれだけ多額のコストを負担する企業が一体どれだけあるのだろうか」という疑問を抱くのが普通であろう。しかも、広告費を年間40億円も投下していればそれなりの数の人の目に触れるはず・・・

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