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実質株主確認制度、アクティビスト等の議決権行使制限に現実味

既報のとおり、法務省の法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会では現在、会社法の改正議論が進められている(2025年7月15・16日のニュース『「稼ぐ力」を高めるための会社法改正の方向性【前編】【後編】」参照)。議論の対象となっているテーマのうち、【後編】」でお伝えした「実質株主確認制度」については、2025年6月25日に開催されたの第3回会議の資料(19~20ページ)に改正条文案が示されている。条文案の1項および2項は下記のとおり。


実質株主 : 株主名簿の背後に存在する投資判断や議決権を行使する権限を持つ株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

1 株式会社は、名義株主又は②の規定により情報が提供されたアに規定する権限を有する者に対し、次のア及びイに掲げる事項に係る情報の提供を請求することができる。
 ア 信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、名義株主が有する当該会社の株式に係る議決権の行使について①の規定による請求を受けた者に対して指図を行うことができる権限を有する者(以下「指図権者」という。)の有無
 イ 指図権者がある場合には、その氏名又は名称、住所及び連絡先並びに当該指図権者がアに規定する権限を有する議決権の数
2 ①の規定による請求を受けた者は、当該請求を受けてから一定期間内に、当該請求をした株式会社に対し、①ア及びイに掲げる事項に係る情報を提供しなければならない。

会社は、名義株主(カストディアンなど)の背後に存在する指図権者(アセットマネージャーなど)、さらにその背後に存在する指図権者(アセットオーナーなど)について、「氏名又は名称」「住所及び連絡先」「権限を有する議決権の数」を開示するよう請求できる。請求の手順としては、会社はまずカストディアンに情報提供を請求し、それによって判明したアセットマネージャーに対しても同様の請求をすることで、資金の出し手であるアセットオーナーまでも把握できる仕組みとなっている。


カストディアン : 投資家の代わりに有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関
アセットマネージャー : 例えば野村アセットマネジメント、ブラックロックなどを指す。アセットオーナー(年金基金など)から資金を預かって投資判断やポートフォリオ構築を担い、委託された資金を企業や資産に投資し、リターンを最大化することを目指す。ただし、アセットオーナーの方針に従って運用を行うため、ESG投資などではアセットオーナーの意向に左右されることもある。
アセットオーナー : 年金基金、保険会社、政府系ファンドなどを指す。自ら運用する場合もあるが、一般的には外部のアセットマネージャー(運用機関)に運用を委託する。投資方針やESG方針などの大枠を定め、投資について最終的な責任を負う。

焦点となるのは、・・・

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