コーポレートガバナンス・コードに盛り込まれた「2名以上」の独立社外取締役の確保に四苦八苦している企業は少なくないが、さらに企業を悩ませることになりそうなのが“日本版SID”の選任だ。
SID(シニア・インディペンデント・ディレクター=筆頭社外取締役)は英国のコーポレートガバナンス・コードに設けられている役職であり、取締役会議長(英国では社外取締役が就任する)の評価のほか、取締役会を自己評価する役目も担う。このSIDの日本版とも言えるのが、日本のコーポレートガバナンス・コードに盛り込まれた「筆頭独立社外取締役」である(補充原則4-8②)。
同原則では、筆頭独立社外取締役は独立社外取締役の互選により決定され、「経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備」を担う旨規定されている。これは要するに、社外取締役の中で“中心人物”を1人選び、取締役会をまとめる機能を果たしてもらうことを意図している。
では、筆頭独立社外取締役にはどのような人材が向いているのだろうか。まず、社外取締役の中で序列を付けることになる以上、他の社外取締役を納得させられるだけの見識、経験を持っていることが必要になるだろう。英国のSIDの例も見ても、年齢は少し高めの方が他の社外取締役の関係上も収まりは良いと思われる。また、取締役会の取りまとめ役として、社外取締役だけでなく、業務執行取締役からも信頼を得られる人物でなければならない。筆頭独立社外取締役にはコーディネーター的な役割も期待されるため、優れたパーソナリティと高いコミュニケーション能力も求められる。さらに、筆頭独立社外取締役も社外取締役の1人であり、株主から信頼を得られなければ次の株主総会での選任は危うくなるため、投資家、資本市場との対話もできることが望ましい。実際、コーポレートガバナンス・コードの補充原則5-1①では、社外取締役も株主との対話に参加することが想定されており、筆頭独立社外取締役が株主の評価にさらされる場面が出て来ることは十分に考えられる。
このような要件を満たす人材として真っ先に思い浮かぶのは、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。