メーカーをはじめ技術力を売りにする企業にとって、技術情報流出の問題は悩みのタネとなっている。こうした中、今月9日には、東芝から技術情報を不正に開示した不正競争防止法違反に問われた元技術者に対し、東京地裁は「懲役5年、罰金300万円」の判決を言い渡している(求刑懲6年、罰金300万円)。裁判の行方に注目していたメーカー等の役員も多いものと思われるが、役員としてこの判決をどう評価し、社員にどう伝えるべきか考えてみたい。
この事件は、東芝と業務提携しているサンディスクに勤務していた元技術者(日本人社員)が、NAND型フラッシュメモリ(携帯電話等の記憶媒体。小型化をめぐり国際競争が激化している)の仕様およびデータ保持に関する検査方法等の機密情報を無断に複製し、韓国の半導体製造会社であるSKハイニックスに不正に開示したというもの。この事件を受け、東芝は2014年3月にSKハイニックスに対して損害賠償(約1100億円)を求める訴えを提起する一方、元技術者は逮捕され、刑事裁判にかけられることとなった。
東芝側の怒りは察するに余りあるが、実は損害賠償を求める訴訟提起から9か月後の2014年12月には両社は和解している。SKハイニックスが東芝に支払う和解金額は約330億円であり、賠償請求金額には遥かに届かなかったものの、日本企業が和解金として取得する額としては非常に高額である。和解に至った背景には、・・・
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