印刷する 印刷する

会社法改正で、海外子会社の不正防止も明確に経営陣の責務に

 少子高齢化に直面する日本の「市場としての魅力」の喪失は今のところ止まる気配がない。金融緩和によって円安となっても、日本企業が海外、特にアジアに進出しようとする動きが減速することはないだろう。

 海外に進出する企業にとってリスクの一つとなっているのが、海外子会社における横領や不正な支出だ。投下する資本が大きくなればなるほどそのリスクは大きくなり、これをきちんと監視・把握する体制の強化が必要となる。

 しかし、現実には海外子会社の経理は子会社任せで、日本の親会社と異なる会計システムを採用しているケースが多い。日常的な経理は子会社任せでも、最低限、銀行口座残高くらいは日次で把握したいところだが、海外子会社が現地の銀行と取引している場合には、銀行から情報を直接入手することは難しい。

 元々こうした実態に悩む財務担当者は多かったが、今年(2015年)5月から施行された改正会社法により、経営陣も明確にこの問題の“当事者”となっていることを認識しなければならない。

 会社法では、従来から取締役会の職責の一つとして「株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」を求めて来た。改正前の会社法では、その体制には「企業集団における業務の適正」を含むことが“施行規則”に規定されていたが、改正会社法ではこれ(企業集団における業務の適正を確保するために必要な体制の整備)が“法律事項”に格上げされ(会社法362条4項6号)、施行規則にはその体制の中身として、子会社における(1)報告、(2)リスク管理、(3)業務効率、(4)法令等遵守のための体制の4点が具体的に書き込まれた(同100条1項5号イ~二)。要するに、日本の親会社の経営陣には従来から海外子会社を含む内部統制の確保が要求されていたが、今回の会社法改正によりそれがより明確にされたわけだ。

 さらに、今後は・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから