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50%損金算入実施でも上場会社の交際費支出を阻む“壁”とは?

 これまで、大法人(資本金1億円超の法人)が支出する交際費は、法人税の計算上「全額損金不算入」とされていたが、平成26年度税制改正により、その50%の損金算入が認められることになった(ただし、接待飲食費に限る。以下同)。この改正は「平成26年4月1日以降に開始する事業年度」において支出する交際費から適用されているため、まずは3月決算法人からその恩恵を受けられることになる。

では、実際のところ、この改正は上場会社の交際費支出にどれほどの影響を与えるのだろうか。

 これまで大法人に交際費の損金算入が認められてこなかった理由としては、冗費の節約、健全な取引慣行の確立、財務基盤の強化等が挙げられる。中小法人(資本金1億円以下の法人)では、年間800万円までの交際費の全額損金不算入が認められているのとは対照的だ。今回の改正は、その大法人の交際費(および中小法人の年間800万円超の交際費)の半分もの損金算入を認める大胆な減税措置であり、従来の法人税法上の交際費の考え方を大きく変えるものと言っていい。

 ただ、この改正により上場会社が交際費の支出を増やすかというと、疑問がある。なぜなら、上場会社には、予算実績の比較や交際費の事前申請といった交際費の無駄遣いを防ぐ仕組みがあり、経済合理性のある交際費のみが限定的に認められているのが通常だからだ。このような仕組みが、税制改正により緩められることは考えにくい。

 特にリーマンショック以降、経費の無駄遣いに対しては社内で厳しい目が注がれており、その中でも交際費はターゲットになりやすい費目。単に税制改正で交際費の損金算入枠が増えたというだけで、交際費の社内申請が通りやすくなることはまずないだろう。また、「損金算入枠ができたので交際費を増やしました」では株主に説明がつかない。結論としては、上場会社は交際費をほとんど増やさない可能性が高い。

 もっとも、上場会社をはじめとする大法人にとっては、支出した交際費の半分が損金算入され、法人税負担がこれまでの半分で済むため、歓迎される減税措置であるのは間違いない。一方、政府としては、消費を喚起して税収を増やすという目論見が達成されず、かえって税収が減る結果になる恐れがある。

 大法人に対する交際費の損金算入枠の創出は、「大法人の売上高や利益の増加」といった大前提をクリアしたのち、「交際費の予算枠の増加」を経て初めて生きてくる改正と言える。今回の減税措置が税収増につながるまでには、少々時間がかかりそうだ。