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「従業員によるガバナンス」の有効性を示した日産事件

経営トップが関与する企業不祥事は防ぐのが難しいと言われる。その背景には、権限が集中する経営トップが意図的に不正をしようと思えば、大抵のことはできてしまうという現実がある。こうした中で、日産自動車のカリスマ経営者であるカルロス・ゴーン会長の金融商品取引法違反()による逮捕は、大型の企業不祥事が発生するたびにそのあり方が議論されてきたコーポレート・ガバナンスの観点からもエポックメイキングな出来事と言える。

 日産自動車の有価証券報告書(2018年3月期)では、ゴーン氏の役員報酬は次のように開示されている(【コーポレート・ガバナンスの状況】の④役員の報酬等より引用)。
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金融商品取引法上、上記の「報酬等」としては「報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの」を開示しなければならないこととされている(開示府令3号様式記載上の注意(37)で準用する2号様式56)a(d))。しかし日産自動車は、ゴーン会長に対する株価連動報酬といった「報酬」に加え、ゴーン会長への住宅の無償供与や家族旅行の経費負担等の「財産上の利益」があったにもかかわらず、これを開示していなかった模様。2018年11月19日付の同社のリリースではここまで詳細な説明はないものの、「開示されるカルロス・ゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたこと」を認めているほか、「カルロス・ゴーンについては、当社の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為」があったことを明らかにしている。

本件をコーポレート・ガバナンスの観点から考えた場合に大きな意味を持つのが、・・・

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