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経営陣の2つのこだわりが招いた過重労働の負のスパイラル

 建設・運輸・外食等一部の業種で、人手不足が叫ばれ始めて久しい。「受注しても、それをこなす人がいない」といった経営者の嘆きが随所で聞かれる。人手確保のための人件費増加が経営を圧迫しかねないほどだ。

 人手不足は業界トップの企業であっても同様。外食業の売上1位のゼンショーホールディングス(東証一部)の子会社「ゼンショー」が運営する牛丼の「すき家」において、一部店舗が人手不足による一時閉店や深夜・早朝営業の休止に追い込まれた件は広く報道されているとおりだ。この問題に関して、7月31日に「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の調査報告書(以下、「調査報告書」)が公表された。調査報告書では、労働環境悪化で退職者が増え、在籍社員が増えない中で新店オープンが相次いだことで人手不足に拍車がかかり、更なる労働環境の悪化を招くという“負のスパイラル”に陥った過程が浮き彫りとなっている。

 「すき家」の営業時間は「24時間、365日営業」が基本だ。第三者委員会が営業時間について経営幹部にヒアリングした際、経営幹部は「営業時間の短縮は考えたこともない」と回答している。また、「売上高日本一」を達成するためには、既存店売上高を高めるだけでなく、新規の出店を次々に行う必要があった。そのため、出店はハイペースで行われ、これに買収により子会社化した既存飲食店の売上が加わることでゼンショーホールディングスの連結売上高は年々増加し、2011年3月期連結決算には3,707億円となった。これは日本マクドナルドホールディングスの連結売上高約3,147億円(同社は12月決算であるため、同期間(2010年4月~2011年3月)の連結売上高を単純に合計したもの)を上回る額であり、外食業では1位となった。

 しかし、その裏では「すき家」の店舗における労働環境が年々悪化しており、それが上述の人手不足の負のスパイラルを加速させていたことが、このほど公表された調査報告書で明らかになった。労働環境悪化の原因を作ったのが、同社の2つの“こだわり”だ。2つのこだわりとは・・・

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