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アニュアルレポートの充実、まず何から始める?

 伊藤レポートでは“グローバルな投資家と対話する際の最低ライン”のROEとして8%という数値が示され、大手議決権行使助言会社のISSは2015年の助言基準の中で、「過去5期平均の自己資本利益率(ROE)が5%を下回り、かつ改善傾向にない場合は経営トップである取締役に対して原則反対推奨をする」ということを初めて示した。また、生命保険協会が毎年行っているアンケートでも、「経営目標として重視することが望ましい」と投資家が考えている指標はダントツでROEが多く、平成26年度調査では93%にも上っている。もはや日本企業はROEに関心を持たざるを得ない状況と言える。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率。「純利益 ÷ 自己資本」により算出される。

 2015年6月1日から実施されるコーポレートガバナンス・コードでは「資本政策の基本的な方針」の開示が求められているが(下記参照)、ここでは多くの企業が資本効率を示す指標としてROEに言及することになるだろう。

【原則1-3.資本政策の基本的な方針】
 上場会社は、資本政策の動向が株主の利益に重要な影響を与え得ることを踏まえ、資本政策の基本的な方針について説明を行うべきである。

 ただし、コーポレートガバナンス・コードの適用には猶予期間が設けられており、コードに従わずにその理由を“コーポレート・ガバナンスに関する報告書”(以下、CG報告書)で説明する“Explain”の時期は、3月決算会社の場合「2015年12月末まで」となる(2015年2月25日のニュース「ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?」参照)。このため、適用初年度の2015年においては、CG報告書のコーポレートガバナンス・コード対応部分の提出時期よりも「アニュアルレポート」の発行時期の方が早い企業は少なくないことが予想される。任意のIRツールであるアニュアルレポートに発行期限があるわけではないが、通常は決算期末から4~6か月後となることが多いからだ。

 正確な期限は「定時株主総会後から6か月後」である。

 多くの企業がコーポレートガバナンス・コードへの対応に苦慮しており、CG報告書の提出時期の猶予措置の適用を受けるところも多いと思われるが、投資家からの期待が高まっている以上、ROEに関する考え方をアニュアルレポートで示しておくことが望ましいだろう。

 既にこれを実践している企業もある。・・・

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