ストックオプションというと、「無償で付与されるもの(=無償ストックオプション)」が一般的だが、その一方で、ストックオプションを取得する際に取得者(役員等)が時価相当額を会社に払い込む「有償ストックオプション」を導入する上場企業が少なくとも300社程度はあるとされており、その数は年々増加傾向にある。
企業が有償ストックオプションを導入してきた理由の1つが、会計上の取り扱いだ。会計上、無償ストックオプションは役職員等への(労務提供の対価としての)「報酬」とされており、費用計上する必要があるが、有償ストックオプションは会社にとって「現金を対価として株式を発行する取引」であることから(すなわち労務提供の対価ではない)、費用に計上していない企業が多い。
ただ、有償ストックオプションは会社法の施行(平成18年5月1日~)により付与が可能となった比較的新しい制度であるだけに、「費用計上しない」という現在広まっている会計上の取扱いは公式なものではない。有償ストックオプションを費用計上(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」を適用)している企業も一部にはあるものの、大部分の企業が費用計上をせず、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」を適用することで、発行時の払込金額を「新株予約権」として計上し、権利行使時において「行使された新株予約権の金額」および「権利行使に伴う払込金額」の合計額を資本金または資本剰余金に計上している(*)。この会計処理であれば費用計上を要しないため、企業の損益への影響はない。
こうした中、会計基準を開発している企業会計基準委員会(ASBJ)は、有償新株予約権の会計処理の明確化の検討に着手、新たな会計基準等を導入し、有償ストックオプションも「ストック・オプション会計基準」の適用範囲に含め、付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として費用計上することを求める方針だ。これにより、「費用計上しない」というこれまでの実務は、一転して認められないことになる。
しかし、・・・
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