米国の「空売りファンド」、グラウカス・リサーチ・グループ(以下、グラウカス)が伊藤忠商事(以下、伊藤忠)に対して仕掛けた「空売り」は失敗に終わったように見えるが、「空売りのポジションを取った後に不正会計の存在を主張するレポートを公表する」という日本企業にとっては馴染みのない手法によりキャピタルゲインを得ようとするグラウカスの手法に違和感・危機感を持った役員も多いのではないだろうか。
まずは本件の詳細な経緯を振り返ってみよう。
グラウカスは2016年7月27日、伊藤忠の株式を「強い売り」推奨とするレポートを公表した。これが“空売り騒動”の発端である。レポートでは、目標株価を2016年7月26日の終値1,262円の半値に相当する631円としたうえ、伊藤忠の“不正会計”も指摘した。これを受け、伊藤忠の株価は早くもレポート公表日の7月27日には年初来安値である1,136円まで落ち込んだ。ここまではグラウカスの目論見通りだったと言える。
グラウカスの目論見 : グラウカスは空売り(株式を証券会社から借りてきて売却)をしており、将来株式を買い戻して返す必要があるため、株価が下がれば下がるほど、グラウカスの利益は増えることになる。
しかし、それからひと月以上が経過し、・・・
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