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新基準の適用で繰延税金資産増加企業は88社、最大152億円

ROEの分母ともなる当期純利益に影響を与える「繰延税金資産」に対する経営者の関心は高い。繰延税金資産を積み増せば、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」は増えることになる(繰延税金資産の詳しい解説は【新用語・難解用語辞典】資産負債法 参照)。この繰延税金資産の計上を柔軟にする会計基準である「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、回収可能性適用指針)が平成28年4月1日以後開始事業年度から適用されているが、果たして企業の決算にどれほどの影響を与えたのか、検証してみよう。

ROE : 自己資本利益率=当期純利益÷自己資本

繰延税金資産は、例えば減損損失のように、会計上は費用に計上できるが法人税上は直ちには費用(損金)に計上できない(実際に損失が発生しないと損金とは認めないというのが法人税の基本的な考え方)という現象が生じた場合に発生するものであり、将来損金化が実現した場合には税金を減らし、当期純利益を押し上げる効果があることから「資産」に分類されている。ただ、将来実際に税金を減らすためには、損金になった時点で課税所得がなければならない(課税所得がなければそもそも税金負担もないため)。そこで、繰延税金資産の計上にあたっては、企業は将来の課税所得の発生について「合理的な根拠」をもって説明する必要がある。回収可能性適用指針は、その前身である監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」よりは繰延税金資産の計上をしやすくするものとはいえ、実際には計上のハードルが高いということは、2016年5月18日のニュース「繰延税金資産の回収可能性適用指針」の適用で繰延税金資産は増加するか」でお伝えしたとおりだ。

減損損失 : 固定資産の時価や収益性が著しく低下している場合に、固定資産の簿価を時価まで減額する処理のこと。

実際、当フォーラムが平成29年3月期第1四半期報告書の会計方針の変更の記載を調査したところ、回
収可能性適用指針の適用により会計処理を変更し、期首時点の繰延税金資産が増加した会社は88社(3月決算会社の約3%)と、少数にとどまっている。業種別にみると下表のとおり。・・・

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