今年も各社の統合報告書がほぼ出そろった。企業価値レポーティング・ラボの調査によると、今年統合報告書を発行した企業(監査法人など上場企業以外の主体も一部含まれる)は266社(2016年10月現在)で、日経225銘柄では半数を超える116社(52%)におよんだ。いずれも昨年(2015年)の数字(企業全体では205社、日経225銘柄では90社(40%))を大きく上回っている。2016年から新たに統合報告書の発行を開始した企業としては、味の素、日立製作所、セブン&アイ・ホールディングスなどがある。また、トヨタ自動車もタイトルこそ「統合報告書」ではないものの、統合報告のコンセプトを取り入れた「Sustainable Management Report」というレポートを今年初めて発行している。ちなみに、3月決算企業各社の統合報告書の発行が例年この時期(7月末~8月末が多く、9月末までにはおおよそ出揃う。英文版は和文版の1か月遅れとなることも多い)になるのは、第2四半期(6~9月)後の海外IRや日経アニュアルリポートアウォード(今年の締切りは10月3日)にタイミングを合わせたいといった理由によることが多い。また、株主総会に合わせると、年度末決算情報や新任役員インタビュー等を盛り込むのにかなりタイトなスケジュールになってしまうという事情もあろう。ただし、なかには日本郵船のように総会前に発行する企業もある。
統合報告書 : 統合報告とは「企業の持続的な成長を伝えるプロセス」であり、統合報告書は統合報告の成果物(アウトプット)を指す。IIRC(International Integrated Reporting Council=国際統合報告評議会)が2013年12月に公表した「国際統合報告フレームワーク」では、統合報告を「企業がどのように持続的な成長を実現しようとしているのかについて報告するもの」と定義している。具体的には、ビジネス上の様々な問題にどう対処するのか、自社の将来性をどうとらえているのか、中長期的な経営戦略をどう描くのか、どのように長期的な企業価値を作り出そうとしているのか、といった内容の報告であり、そこには「非財務情報」が多数含まれる。
統合報告書を発行する上場企業数は、2014年12月にIIRC(国際統合報告評議会= International Integrated Reporting Council)から国際的な統合報告フレームワークが公表されて以来増加傾向にあるが、今年その数が大きく伸びた背景には、やはり・・・
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IIRC : 国際的に合意された統合報告のフレームワークを構築するため、2010年8月に設立された英国を拠点とする民間の非営利法人。規制当局、投資家、企業、会計の専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。また、IFAC(国際会計士連盟)、IASB(国際会計基準審議会)などとも協力関係にある。