自社の成長にM&Aを活用しようという企業では、のれんが非償却となるIFRS(2016年7月26日のニュース「のれんを償却すれば赤字に転落する企業も」参照)を導入するか否かが役員会等で話題に上ることもあろう。
その判断において役員が持つべき視点は、一言で言えば「IFRS導入によるコストを上回るベネフィットがあるか」ということに尽きる。冒頭で述べたとおり、M&Aに積極的な経営陣の下では、IFRSの導入は大きなメリットとなるであろう。一方、コスト面では、IFRS導入に伴うコンサルティング会社や監査法人への報酬、連結パッケージの見直しなどのシステムコストなどが増加する。また、IFRSの導入作業は、従来からの日本基準による決算業務と並行して進めることになる。役員としては、従業員の負担増加も忘れてはならない。
連結パッケージ : 連結財務諸表の作成に備えて、親会社が連結子会社等に提供を求める一連の財務等の報告データの総称
IFRS導入後も負担は続く。一つは「日本基準から離れられない」ということである。有価証券報告書の「業績等の概要」では、日本基準の連結財務諸表との主な相違点を開示する“並行開示”を行わなければならない。このため、IFRSを導入した場合には、導入後も日本基準とIFRSの連結財務諸表との間の主要な相違を定量的に把握し続ける必要がある。
もう一つは・・・
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