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サマリー情報の先行開示に対する投資家の考え方

野村総合研究所
上級研究員  三井千絵

2017年3月期末が近づき、今後決算のとりまとめ作業も本格化することなる。今回の決算において大きなトピックとなるのが決算短信(以下、「短信」)の見直しだ。今回の見直しにより、短信の冒頭のページ(最初の2~3ページ)の「サマリー情報」の記載が自由化(=証券取引所が定める「決算短信・四半期決算短信作成要領等」に記載されている「様式」の使用義務の撤廃)されるとともに、投資判断に影響がなければ財務諸表を添付せずにサマリー情報だけを提出することも可能となった(通期決算への適用は2017年3月期から、四半期決算への適用は2017年6月の第1四半期から実施。改正内容の詳細は2017年2月28日のニュース「決算短信の改正に伴い判断が求められる事項」参照)。その趣旨は、「建設的な対話」を促進する観点から、短信の開示の自由度を高めることとされているが、監査法人やIRサポート会社、関係団体等によるこの改正についての解説を見ると、今回の改正の理由として、“速報性”という言葉が強調され、本来とは異なる意味にとらえられていると思われるケースが目に付く。具体的には、「今回の改正では、短信を早期に提出するために情報量を減らすことが求められた」といったものだ。

例えば日本公認会計士協会は、短信の改正案(証券取引所の上場規則改正案)が昨年(2016年)10月28日にパブリックコメントに付されたことを受け同11月に東証に送付したコメントレターをウェブサイトに掲載しているが、その中では「速報性に着目した記載内容の削減による合理化について」といった見出しを付けたうえで「速報性が重視される決算短信が、実態として金融商品取引法の開示を先取りした内容になっていることから、決算短信の記載内容の削減には賛成」とコメントしている。このコメントからは、「短信自由化」の目的は、「速報性」を確保するための「記載内容の削減」であるかのように見える。しかし、この改正が議論された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(WG)では、元々は・・・

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