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「女性の活躍状況」の開示と企業の開示負担

 政府は、女性の活躍を成長戦略の重要な要素ととらえ、それを加速させるための具体策の1つとして、企業に「女性の活躍状況」を有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書などで開示することを促し、さらに義務付けることができないか検討している。

 この議論は、平成24年の「女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議」から公表された「女性の活躍促進による経済活性化行動計画」がきっかけになっている。同計画は、女性の活躍状況の“見える化”に向け、企業に女性の活躍に関する指標等の公表を促すため、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書、IR資料などにおける公表方法のあり方などを検討するもの。

 この報告書に沿って、2012年9月には内閣府に「女性の活躍状況の資本市場における“見える化”に関する検討会」が設置され、同年12月に報告書が取りまとめられた。そこでは、有価証券報告書における男女別の従業員数や平均賃金等の記載を強制すべきとの意見も出されたが、この点は最終報告書には盛り込まれず、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において「役員等の男女別の構成」や「役員への女性登用の状況」等の“自発的な”情報開示を促進するという方向性が示されるにとどまった。東証や内閣府、経済産業省等が積極的に開示を勧めていることもあり、コーポレート・ガバナンスに関する報告書における自主開示は進んでいるようだ。また、内閣府男女共同参画局による「女性の活躍「見える化」サイト」も立ち上がり、2014年2月14日現在上場企業3,552社中1,150社(32.4%)の情報が開示されている。

 その後も、政府の産業競争力会議で「有価証券報告書等を通じた情報開示の促進」について議論が行われるなど、開示促進の流れは続いており、女性の活躍状況についても、最終的には、有価証券報告書で開示の強制が求められる可能性もある。

 有価証券報告書での開示の強制といっても、例えば「役員の男女比」などであれば既存の情報を加工すれば足りるので、企業にとって開示コストはかからないと思われるが、一方で、女性に関する開示義務付けをきっかけに、次々に新たな開示が求められることを懸念する声が企業側から上がっている。つまり、「女性」の次は「環境」、その次は「人権」・・・といった具合に、五月雨式に新たな開示項目が出てきて、企業の開示コストが膨らむのではないかとの懸念だ。

 企業としては、どのような開示を行うべきかは「作成者のコストと投資家のベネフィット」を比較考量のうえで決められるべきという立場であり、“ホットイシュー”というだけで開示項目を増やすべきではないというのが本音だろう。

 金融庁が、平成26年3月期決算から連結開示情報や会社法開示情報と重複する情報を削減する金商法上の「単体開示の簡素化」を打ち出すなど、企業の開示負担削減の動きも見られる中で、「女性の活躍状況」の開示が強制開示となるのか、企業の自主開示となるのか、今後の企業の開示負担を占う意味でも注目される。