印刷する 印刷する

相談役・顧問への風当たり強く・・・業務内容等の開示制度導入へ

東芝問題では、相談役・顧問の圧力や存在そのものが現経営陣の意思決定に影響を与え、それが経営危機の遠因になったと言われている。東芝に限らず、相談役・顧問を置く上場企業は重厚長大産業や金融機関を中心に幅広く見受けられ、その実態も不透明であることが少なくない。それゆえ、相談役・顧問に対する投資家の視線は厳しい。

投資家の不満は、相談役・顧問の選任に株主の議決権が及ばないことにある。こうした中、議決権行使助言最大手のISSは、今年(2017年)から、相談役制度の新設に対して、相談役が取締役の役職として提案される場合を除き()、原則として反対を推奨する方針を示しているところだ。

相談役制度 : 「相談役」に限らず、顧問、名誉会長、ファウンダーなど活動の実態が見えにくい名誉職的なポストを含む。

 この場合、株主は取締役の選任議案に対して議決権を行使できるため。

相談役・顧問制度は株主総会でも争点化している。武田薬品工業(3月決算)の定時株主総会では、最近5年間の平均ROEが約3.0%に過ぎなかったとして、株主15名が相談役・顧問の設置に制限を課すために以下の「定款変更議案」を提案している。

武田薬品工業における株主提案の定款変更議案
現行定款(2016年6月29日改正)の第16条の2(相談役・顧問等の設置及び選任)として下記の文言を新たに追加する。
「1.当会社は、原則として相談役又は顧問等当会社の業務一般又は特定の業務について代表取締役の諮問に応ずることを職務内容とする役職を置かない。新たにこれを設置しようとする場合には、相談役・顧問等の設置に関する議案を株主総会に付議し、株主総会に於ける事前の決議を要することとする。
2.当会社が、前項の株主総会の決議により相談役・顧問等を設置した場合には、相談役・顧問等を選任するためには具体的な相談役候補者名の議案を株主総会に付議し、株主総会に於ける事前の決議を要することとする。」

同社は株主総会終了後に現取締役会長を相談役に任命する予定であり、今回の株主提案はこれを阻止するために行われたもの。一方、同社の取締役会は上記株主提案に反対することを表明しており、予定どおり現取締役会長を相談役に任命するとの姿勢を崩していない。折しも、スチュワードシップ・コードの改訂で機関投資家の議決権行使結果の個別開示がスタートしたばかり(改訂スチュワードシップ・コードの詳細は「議決権行使結果個別開示、“穏便な”コンプライは認められず」参照)であり、ISSも株主提案を賛成推奨している模様だ。

機関投資家が本株主提案に対してどのような判断をするのか注目されるところだが、機関投資家の判断に影響を与えかねないもう一つの動きが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから