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経営環境や経営方針などの「判断時点」明記なしの企業多数

変化の早い時代、企業の経営環境があっという間に変質してしまうことは珍しくない。近年は、これまで重宝されてきた技術やサービスがイノベーションにより一瞬にして陳腐化してしまいかねない恐ろしい時代になったとも言える。経営陣には、経営環境の変化を見極め、機敏に経営方針を見直していく能力が求められる。それだけに、経営環境や経営方針といった情報は投資家にとっても最大の関心事の一つとなっている。

こうした中、決算短信の記載内容の改正(改正の内容は2017年2月28日のニュース「決算短信の改正に伴い判断が求められる事項」参照)のあおりを受け、これまで決算短信の記載内容の一つであった「経営方針」は有価証券報告書において開示することとされたのは周知のとおり。具体的には、2017年3月期から有価証券報告書の【対処すべき課題】の記載内容に「経営方針」が追加され、項目名が【対処すべき課題】から【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】へと変更されている(記載内容の詳細は2017年3月8日のニュース「有価証券報告書に移行の「経営方針」には何を書く?」参照)。【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】に記載すべき内容(記載上の注意)は次のとおりである。

【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の記載上の注意
a 当連結会計年度末現在において連結会社(連結財務諸表を作成していない場合には提出会社)が経営方針・経営戦略等を定めている場合には、当該経営方針・経営戦略等の内容を記載すること。また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載すること。
b 当連結会計年度末現在における連結会社の経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題について、その内容、対処方針等を具体的に記載すること。
なお、基本方針を定めている会社については、会社法施行規則118条3号に掲げる事項(当該株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針)を記載すること。
c 将来に関する事項を記載する場合には、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものである旨を記載すること。

そして、将来に関する事項を記載する場合には、当該事項は「当連結会計年度末現在において判断したものである旨」を記載することとなっている(上記の赤字「c」参照)。そもそも「経営方針」や「対処すべき課題」などの多くは将来のことであるため、「当連結会計年度末現在において判断したものである旨」を記載する必要があるケースが多いはずだ。ところが、当フォーラムが2017年3月期の有価証券報告書を調査したところ、・・・

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