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ESGに関する対話の現状

多くの企業は、運用機関との対話で「ESG」に関する話題が増えたと感じていることだろう。当フォーラムでも報じてきたとおり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国連責任投資原則(PRI)に署名したことを受け、運用機関に対しESG投資に取り組むことを推奨している(2017年7月6日のニュース「GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)。その結果、GPIFから運用を受託する多くの運用機関がESG投資を標ぼうし始めており、既に企業に対してESGに関する取材を始めているところもある。

ESG : ESGとは、Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) : 「Government Pension Investment Fund」の略で、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
国連責任投資原則(PRI) : (国連)PRIとは「(United Nations) Principles for Responsible Investment」の略で、機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること

こうした動きは、ESG投資の進展という観点からは大きな一歩と言えるが、実際に取材を受けた複数の企業に話を聞くと、ESGに関しては運用機関側にも未熟な部分が見られ、まだ「対話」と言えるまでには至っていないケースも少なからずあるようだ。

企業からしばしば耳にするのが、取材にあたるポートフォリオマネージャーやアナリストが形式的な質問に終始しているという指摘である。多くの運用機関は、個別企業のESG評価のためのシートを作成し、このシートに基づき取材を行っている。このような取り組み自体は否定されるものではないが、評価シートを埋めることが目的化しているとすれば問題だ。単に評価シートに記載された項目に沿って企業に質問をするだけならアンケート調査と何ら変わらず、企業との建設的な対話とはほど遠い。

こうした事態が生じている背景には、二つの課題があるように思われる。一つは、・・・

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