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FDルールの適用を回避できる「やむを得ない理由」が明らかに

企業と投資家の双方が対話の充実に向けた取り組みを進めるにつれ、両者の間で生じている悩ましい問題が、インサイダー情報の漏洩だ。上場会社が投資家からの質問に答えていく中で、つい未公表のインサイダー情報を漏らしてしまう可能性は否定できない。こうした中、2017年の金融商品取引法の改正により「フェア・ディスクロージャー・ ルール」(以下、FDルール)が創設され、2018年4月1日から適用が開始されることになったのは既報のとおり(2017年3月9日「フェア・ディスクロ・ルール成立までに上場会社がやるべきこと」、2017年3月21日「FDルール「株価に影響を及ぼす決算情報」の選定が困難な場合の対応は?」参照)。

FDルールはインサイダー規制と混同しやすいが、インサイダー規制がインサイダー情報をもとに株式を売買して利益を得た「投資家」に対する金商法上の規制である一方、FDルールは、インサイダー情報を漏らしてしまった「企業」の行動を規制するルールであり、これまで我が国には存在しなかった。具体的には、上場会社が未公表の重要な情報を証券会社や投資家などに伝達する場合には、「意図的な伝達の場合は、同時に」、「意図的でない伝達の場合は、速やかに」当該情報を企業のウェブサイトなどで公表することが求められる。

ただ、これには例外がある。取引関係者(証券会社や信用格付業者など)が、「法令(例えば金融商品取引法)または契約」により、重要情報の公表前にこれに関する秘密を他に漏らすこと及び当該上場会社の株式を売買してはならない等の義務を負っている場合、FDルールは適用されないことになっている(改正金商法27条の36第1項ただし書き)。これは、法令や契約で情報漏洩や株式の売買が禁止されていれば、取引の公正性が害されるリスクは低いからだ。

それでも、取引関係者から情報が洩れる可能性はゼロではないだろう。そこでFDルールでは、情報が漏れた場合に備えて、取引関係者が法令または契約に違反して(重要情報公表前に)秘密を漏らしたり株式を売買したりしたことを上場会社が知った場合には、当該上場会社は“速やかに”当該重要情報を公表しなければならないとしている(改正金商法27条の36第3項)。

もっとも、上場会社にしてみれば、公表できない情報もあろう。この点を踏まえFDルールでは、「やむを得ない理由により当該重要情報を公表することができない場合その他の内閣府令で定める場合」には情報公開しなくてもよいとしているが(改正金商法27条の36第3項ただし書き)、これまで「やむを得ない理由により当該重要情報を公表することができない場合がどういう場合を指すのかは明らかでなかった。こうした中、金融庁はこのほど(10月24日)「重要情報の公表に関する内閣府令案」(以下、内閣府令案)を公表(11月22日までパブリックコメントを募集)し、その具体例を示している。それによると、「やむを得ない理由により重要情報を公表することができない場合」は下表のとおり、・・・

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