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繰延税金資産の回収可能性、会社に求められるより高い立証レベル

 2014年3月21日のニュース「業績低迷時は要注意!繰延税金資産の回収可能性の判断基準見直しも」で既報のとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)は現在、税効果会計の見直しを検討しているが、3月21日のニュースでお伝えした繰延税金資産を計上する際の「見積可能期間」を現在の「5年」から「9年」に変更すべきかどうかに加え、「繰延税金資産の回収可能性」の判断を左右する「5つの会社分類」そのものの見直しも検討されることになりそうだ(繰延税金資産の基本的な解説は同日のニュース参照)。

 繰延税金資産は、将来の回収可能性がなければ計上することはできない。現行の税効果会計実務では、将来の回収可能性を見積もることができる年数を、下表のとおり会社の業績の良し悪しによって5つの区分に分類している。

<繰延税金資産の回収可能性を巡る5つの会社分類>

(1)一時差異と相殺するだけの十分な課税所得がある会社 繰延税金資産は全額回収可能と判断する
(2)業績は安定しているが、十分な課税所得がない会社 一時差異等のスケジューリング(*)の結果に基づく限り、回収可能性があると判断できる
(3)業績が不安定な会社 おおむね5年内の課税所得の見積額を限度として、その期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づく限り、回収可能性があると判断できる
(4)重要な税務上の繰越欠損金がある会社 翌期(1年)に確実に見込まれる課税所得の見積額を限度として、その期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づく限り、繰延税金資産は回収可能性がある ※リストラなど特殊要因がなければ課税所得を毎期計上しているような会社は(3)と同様に取り扱う
(5)債務超過の会社、連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社 繰延税金資産の回収可能性なしと判断する

* スケジューリングとは、一時差異が解消するタイミングのスケジュールを作成することをいう。

 本来、この分類はあくまで例示に過ぎず、会社の実態に応じた判断が行われるべきである。しかし、一度このような分類を定めてしまうとそれが一人歩きしてしまうのも事実。実際に、各区分ごとに定められた所定の年数を上限に、回収可能性を半ば定型的に判断するというような実務を見かけることも少なくない。

 そして、業績不振に陥り下の区分に転落した場合、過去に計上していた繰延税金資産を取り崩すことを求められ、取り崩した額だけ税金費用(損益計算書の税引前利益の下に記載される法人税等)が増えることになる。それだけに、自社や連結子会社はどの会社区分に該当するのかという点に関心が集まりがちと言える。

 このような「5つの会社分類」を見直すかどうかについては、関係者の間でも「廃止すべき」というものから、「過去の業績だけではなく将来見通しも含めて柔軟に回収可能性を検討すべき」「基本的に存置すべき」と意見が分かれている。もっとも、産業界から強い改善要望が上がっていることを踏まえれば(ちなみに、監査人(監査法人)側は「基本的に存置すべき」とのスタンス)、何らかの見直しが行われる可能性が高そうだ。具体的には、・・・

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