GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が委託運用機関に対し「SDGs」をESG投資の一要素として考慮するよう求めていることもあり、SDGsに対する上場企業の関心は着実に高まっているが(上場企業におけるSDGsへの取り組み状況については2017年8月21日のニュース「上場企業の間で徐々に対応が進むSDGs」参照)、残念ながら多くの上場企業がその対応について決定的な誤解をしている。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) : 「Government Pension Investment Fund」の略で、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、下図の17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること
上図のとおり、SDGsには下記に掲げる17の目標がある。
目標1:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標2:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
目標4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
目標6:すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
目標7:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
目標9:レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
目標10:国内および国家間の不平等を是正する
目標11:都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
目標17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
上記の17の目標はいずれも「やって当然の目標」に見えるかもしれない。それゆえ、上記の中に実践している目標があっても、そのことを特段開示してないという企業が少なくない。その背景には、「やって当然のことをやっただけで、それを殊更アピールするのはいかがなものか」といった日本人的な価値観があるのかもしれないが、自社の株価への影響という観点からは、それは大きな間違いであることを経営陣は認識する必要がある。・・・
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