EUでは、2016年6月から上場企業等に対して、監査法人を一定期間(原則として最長10年)で交代させる「監査法人のローテーション」が義務化され、監査法人が交代してから再就任するまでは4年間のインターバルが必要とされている。一方、日本の公認会計士法では、公認会計士と監査クライアントの馴れ合いを防ぐ観点から「監査法人内」で公認会計士をローテーションさせる制度は設けているものの、監査法人自体のローテーションまでは求めていない。これに対して投資家から「日本でも監査法人のローテーション制度を導入すべき」との声が上がる中、有価証券報告書で「当該監査人がその企業の監査に従事してきた期間」を開示させる案が金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」で示されるとともに、「日本再興戦略2016」にも盛り込まれたところだ。この開示制度は日本再興戦略2016の工程表で2016年度から2018年度にかけて導入されるとされていたものの未だ導入されていない(2018年6月に金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループより「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」が公表され、導入の道筋が整えられたところである)が、仮に導入された場合、「ガバナンスを強化する」といった理屈付けのため、「大監査法人から別の大監査法人に交代」あるいは「中小の監査法人から大監査法人に交代」するケースが多数を占めると予想されている(以上、2016年6月24日のニュース『「同一の監査人による監査期間」の開示が制度化された場合の企業への影響』参照)。
ところが、足元の動きを見ると、・・・
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