印刷する 印刷する

IFRSで非償却となるのは「のれん」だけではない

IFRS(国際会計基準)では「のれん」は非償却とされているため(2016年7月26日のニュース「のれんを償却すれば赤字に転落する企業も」参照)、日本の会計基準のように毎期のれんの償却費用が利益を圧迫するようなことはない。企業買収を通じて成長を図ろうとする企業にとって、のれんを償却する必要がないことは、IFRSを採用する大きな理由(メリット)の1つとなる。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」(超過収益力=投資におけるプレミアム部分)である。日本の会計基準では、このプレミアム部分は時の経過とともに減衰していくと考え、投資の効果がなくなるまでの期間を見積もり(ただし最長20年)、当該期間が終了するまでに定期償却(規則的な費用化)することになっている。また、当初の見積もり以上に価値が減衰していれば減損を行う。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。

しかし、2018年7月に開催された国際会計基準審議会においては、以下とおり、のれんの償却を再導入するかどうかが検討テーマとなっており、果たして「のれん=非償却」の時代が終わりを迎えるのか、にわかに注目が集まっている。

国際会計基準審議会 : IFRS(国際会計基準)を策定している会議体で、英語名は「IASB= International Accounting Standards Board」

のれんと減損
(略)
e. のれんの会計処理の簡素化という目的を追求する際に、次のようにする。
(略)
ii. のれんの償却を再導入するかどうかを検討する。 14 名の審議会メンバーのうち 8 名がこの決定に賛成し、6 名が反対した。

ASBJ公表資料「IASB Update 2018年7月」5ページより抜粋

ASBJ : 日本の会計基準を策定している会議体で、日本名は「企業会計基準委員会」

IASBの会議でのれんの償却がテーマとなっているのは、現行の減損テスト(IFRSでは、のれんは非償却とされている代わりに、毎期減損テストを実施しなければならない)により認識されるのれんの減損損失が「少なすぎる」また「遅すぎる」(too little, too late)といったことが問題視されているからだ。減損損失は経営者の将来の見積りに大きく依存して算定されるため、減損損失が「too little, too late」ということは、経営者による楽観的で甘い見積りが多数見受けられるということを意味している。

減損テスト : 減損の兆候の有無を評価し、兆候があれば帳簿価額と回収可能価額とを比較すること

以上のように、IFRSでは「のれん=非償却」ということがよく話題となるが、IFRSにおいて非償却とされる資産は、実は「のれん」以外にもある。それは、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから