昨年(2017年)は、GPIFがESG総合指数である「FTSE Blossom Japan Index」と「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」、ESGのS(社会)に着目した「MSCI 日本株 女性活躍指数(WIN)」を採用、これらに基づき国内株式全体の3%程度に相当する約1兆円の運用を開始したことから “ESG元年”と言われた(ESG指数については2017年7月6日のニュース「GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)。さらにGPIFは昨年11月からESGのE(Envirronment=環境)をカバーするグローバル環境株式指数の公募・選定を開始、先月(2018年9月)25日には、新たに選定したESG指数に基づきパッシブ運用を開始することを公表している。新たなESG指数は、世界的な環境各付け会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社、および同社傘下にあるトラコスト社(両社の詳細は公表資料の18ページを参照)が組成・運用する「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」であり、同指数に基づくGPIFの運用資産額は約1.2兆円に達する予定だ。
GPIF : 年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。
昨年から運用されている上記3指数では、ESGへの対応に優れた企業を選別する「ポジティブスクリーニング」と呼ばれる手法が採用されており、実際に投資対象となる企業数は約150〜250社に絞り込まれている。一方、新指数は基本的に東証1部全銘柄が対象(一部の流動性の低い銘柄などを除く。詳細は後述)としたうえで、炭素効率性や情報開示への評価によって資金配分にウェイト付けを実施するものであり、ESG情報を投資判断に加味する「インテグレーション」と呼ばれる手法が採用されている。
炭素効率性 : 「炭素高率性が高い」とは、企業の温室効果ガス排出量を売上高で除した値が小さいことを指す。
投資対象銘柄から除外されるのは、・・・
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