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台湾が英文開示や監査委員会設置義務付けへ

野村総合研究所
上級研究員  三井千絵

台湾の資本市場の規模は日本と比較して小さい。その分、海外機関投資家へのアピールの必要性という点では日本(企業)より切実なのかのかもしれない。

台湾の金融監督当局である金融監督管理委員会(Financial Supervisory Commission)は(2018年)10月15日、「第12回台北コーポレートガバナンス・フォーラム」を開催した。同フォーラムは2年に一度行われているイベントだが、今年は台湾が2018年からスタートさせたコーポレートガバナンス改革の「新3カ年ロードマップ」への取り組みに関する話題が多く取り上げられた。

昨年2017年は、台湾が2013年から5カ年計画で進めてきたコーポレートガバナンス改革の最終年であったが、この年にACGAが公表したアジアの国別コーポレートガバナンス改革ランキングでは、台湾は11か国中4位に入っている(ちなみに日本は3位)。 

ACGA : Asia Corporate Governance Association(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)の略で、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

このようにコーポレートガバナンス改革に積極的な台湾は、他分野でも日本に先んじてきた。例えば会計分野では、日本ではいまだ任意適用とされているIFRS(国際会計基準)を、既に2013年には全企業に強制適用している。当時IFRSを強制適用しているのはEU企業ぐらいしかなく、また、IFRSは金融機関に向いていると考えられていた中、台湾企業の約7割を占める製造業がIFRSをいかに適用していくのか注目を集めた。また、その頃から台湾証券取引所は企業に対し、GRI(Global Reporting Initiative=グローバル・レポーティング・イニシアティブ)に準拠したCSR報告書を作成することを奨励していた。2014年に導入された日本のスチュワードシップ・コードに相当するスチュワードシップ・プリンシパルの導入は日本より2年遅い2016年となったが、2017年には議決権行使のe-Voting(電子投票)が導入されている。

GRI : GRIは地球環境問題の深刻化を背景に1997年、国連傘下のNGOとして設立された。当初は環境報告書の国際基準を策定することを目的にしていたが、その後、「経済」「環境」「社会」の3つの側面から企業を評価するトリプルボトムラインの考え方を採用することで、GRIのガイドラインは持続可能性(サステナビリティ)報告書の指針となった。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

こうした動きに続くのが、今回の台北コーポレートガバナンス・フォーラムでもテーマとなったコーポレートガバナンス改革の「新3カ年ロードマップ」だ。筆者は同フォーラムに出席し、その後、台湾証券取引所にこのロードマップについてヒアリングを行ったが、日本企業が参考とすべき点が多く見られた。

新3カ年ロードマップは大きく分けて、(1)CSRの更なる強化、(2)ボード(取締役会)の役割の強化、(3)機関投資家の活性化、(4)企業による情報開示の強化、(5)関連法令の強化、5つの柱から構成される。以下、注目される事項について具体的に見ていこう。・・・

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