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情報漏洩企業も対象に “気候変動以外”の投資撤退要因

このほどGPIFパッシブ運用に新たに採用したESG指数「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」は運用資産額約1.2兆円、投資対象は1,694銘柄(東証1部上場企業の約8割)にのぼる(2018年10月9日のニュース「東証1部上場企業の8割がESG投資の対象に」参照)。また、欧州トップの資産運用会社アムンディ・アセットマネジメントが運用するファンドのすべての構成銘柄についてESG 実績を考慮して議決権を行使する方針を打ち出すなど、ESGに対する機関投資家の関心は高まる一方となっている(2018年10月11日のニュース「アムンディ、全投資先の議決権行使でESG実績を考慮」参照)。ESGの中でも最近グローバル機関投資家の関心が特に高まっているのが「E」の一分野である気候変動問題だが(2018年3月9日のニュース「グローバル機関投資家の新たな関心事」参照)、ESG投資を行う機関投資家の間では、気候変動関連以外の要因でも投資から撤退(以下、ダイベストメント)する動きがある。

GPIF : 年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。
ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること

化石燃料関連企業など気候変動への影響が大きい企業を除くと、ESG絡みのダイベストメントの先駆けとしては、カルフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS=カルスターズ)が2013年から銃器メーカーに対して実施したもの挙げられるが、今年(2018年)4月には預り資産残高世界トップの資産運用会社である米国のブラックロックが銃器を販売する小売大手ウォルマートやスーパーマーケット大手クローガーなどをESGファンドからダイベストメントしている。相次ぐ銃乱射事件などをきっかけに銃規制の機運が高まる中、本件はダイベストメントの対象を銃器販売を専門としているわけではない一般小売業にまで広げた点で、ESG投資におけるダイベストメント対象拡大の動きとして注目を集めたところだ。

もっとも、銃問題は米国社会特有の問題であり、日本企業にとってはあまりピンと来ないかもしれない。このほか、タバコ、原子力、核兵器、毛皮関連企業などもダイベストメントの対象とされてきたが、これも一部の業界の話であり、多くの日本企業の経営陣は「ウチには関係ない」と考えているのではないだろうか。

しかし、ESG投資におけるダイベストメントの対象はより幅広い業界にも広がりつつある。例えば・・・

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