2018年6月27日のニュース「経営戦略や政策保有株式等、更なる拡充が求められる有報開示」でお伝えしたとおり、上場企業は2018年3月31日以降に終了する事業年度(3月決算企業であれば前期)の有価証券報告書等からMD&A(Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations)の記載内容を充実させることが求められている。また、2020年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からは、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】における「経営方針・経営戦略等」について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明が求められるとともに、【事業等のリスク】について、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明が求められる(『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』を参照)。
MD&A : 「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。
近年、有価証券報告書における記述情報をより詳細にすることを目的とした改正が相次いでいる背景には、上場企業のコーポレート・ガバナンスや機関投資家のスチュワードシップ責任の強化、ESG投資の増加とともに、投資家の関心の比重が定量的な情報である財務情報から定性的な情報である記述情報に移ってきているということがある。
記述情報 : 【連結財務諸表】【財務諸表】【主要な経営指標等の推移】といった金額面の開示を中心とした財務情報に対して、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】といった文章による説明が中心となる開示情報のこと。
ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。
ただ、ひな形に数字をはめ込むだけでも形になる財務情報とは異なり、記述情報で求められる情報は各社各様であり、そもそもひな形的な開示は馴染まない。また、情報の受け手である投資家もボイラープレート(決まり文句)的な開示を欲してはいない。したがって、本来であれば上場企業は各記述情報についてそれぞれ開示が求められる趣旨を正確に理解し、経営者の考えを分かりやすく記載する必要があるが、それは長らくひな形的開示に慣れ親しんできた日本企業が苦手とするところだ。
こうした中、金融庁は・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。