企業と監査人の癒着による会計不正を防ぐため、EUでは既に監査法人のローテーション制度が導入されており、監査法人の継続任期は「10年」が上限とされているが(監査法人のローテーション制度については、2016年6月24日のニュース『「同一の監査人による監査期間」の開示が制度化された場合の企業への影響』参照)、既報のとおり、ついに日本でも「継続監査期間(同一の監査法人に継続して監査を受ける期間)」が10年を超える上場企業に対して当該期間の開示が求められることとされたところだ。EUのように10年を超えて継続監査を受けることが禁止されたわけではないが、2020年3月31日以降終了事業年度の有価証券報告書(以下、有報)から、「コーポレート・ガバナンスの概要」の「監査の状況」欄に「財務書類について連続して監査関連業務を行っている場合におけるその期間(以下、継続監査期間)」を開示するよう、企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、開示府令)が改正されている(開示府令の改正経緯については、2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』参照)。継続監査期間の開示を求めることで、「監査契約の固定化」に“プレッシャー”を与えるとともに、監査契約継続の是非について投資家に判断を委ねる(継続監査期間に問題があるのであれば、投資家は企業との対話を通じて監査法人の交代を求める)べきということだろう(「監査契約の固定化」については【役員会 Good&Bad発言集】「継続監査期間」参照)。
監査契約の固定化 : 企業が会計監査を長期にわたり同一の監査法人に会計監査を委嘱し続けること
この開示に対応するため、上場企業各社は、まず自社の継続監査期間が何年なのかを把握する必要があるが、なかには判断に迷うケースもあろう。例えば異なる監査法人の監査を受けていた企業同士が合併した場合などは、どこを継続監査期間の起点として考えればよいのか疑問がわく。また、昨年(2018年)7月には準大手の一角を占め監査クライアント数も多い太陽有限責任監査法人と優成監査法人が合併している。このように監査法人の合併があった場合にも同様の疑問が生じる。そこで金融庁は、改正開示府令の施行(2019年1月31日)とともに公表した「パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」の中で、継続監査期間のカウント方法を明らかにしている(「パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」の10ページの36番を参照)。以下、図解とともに紹介しよう。・・・
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