2019年2月20日のニュース『金融商品の時価の「レベル別開示」義務化で上場会社への影響は?』でお伝えしたとおり、経営者(会社)と投資家との間で「情報の非対称性」を生みやすい「金融商品」に関する会計基準を改正する案(以下、時価算定基準案)が先月(2019年1月)企業会計基準委員会(ASBJ)から示され、金融商品の時価を算定する際に使われるインプット(=時価の算定式に入力する数値)の影響度(重要度)のレベルに応じて、時価を客観性の高い順に「レベル1の時価(上場株式の時価など)」「レベル2の時価(金利スワップの時価、為替予約の時価など)」「レベル3の時価(複雑なデリバティブ取引など)」の3つに分類し、各レベル別に開示することが求められる方向となっている。
情報の非対称性 : 自社の情報については、経営陣など社内の人間の方が投資家よりも詳しいということ。
金利スワップ : 固定金利と変動金利をスワップ(交換)するデリバティブ契約。変動金利で借り入れをした企業が、金利を固定化するために「変動金利を受け取り、固定金利を支払う」金利スワップ契約を利用するケースが多い。
為替予約 : 金融機関との間で、将来、外国通貨を一定の為替レートで購入または売却することを予約する契約。為替リスクをヘッジ(為替レートの変動により受け取る(または支払う)自国通貨の額が変動することを回避)するのが目的。
客観的に把握することが容易な「レベル1の時価」「レベル2の時価」に対し、企業にとって問題となるのが、複雑なデリバティブ取引など「レベル3の時価」をいかに評価するのかということだ。
現状、複雑なデリバティブ取引を行う企業は、当該デリバティブ取引の時価として、金融機関が算定した時価をそのまま使用していると思われるが、時価算定基準案においては、金融機関等の第三者から入手した相場価格をそのまま「時価」として使用することは認められてない。第三者から入手した時価を利用するためには、当該時価が時価算定基準案に沿って算定されたものであることを企業が自ら検証しなければならない。このため、第三者から入手した相場価格を利用する場合、経営者は例えば次のよう内部統制を整備・運用することが求められると考えられる。・・・
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