2019年1月31日公布・施行された改正開示府令により、同年3月決算会社の有価証券報告書から「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅に拡充されるなど(関連記事は下記)、上場会社はコーポレートガバナンスに関する開示の充実を迫られているが、こうした中、東証は2019年2月21日付でコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)の記載要領(以下、記載要領)を改訂、同年3月決算会社から適用する(改訂版の記載要領はこちら)。今回の記載要領の見直しも、上記開示府令の改正と同じく、昨年(2018年)6月28日に金融庁が公表した「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-資本市場における好循環の実現に向けて-」(以下、DWG報告)の提言を踏まえたものとなっている。
<有価証券報告書「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載拡充に関連する記事> ・2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』 ・2018年12月21日のニュース『「記述情報の開示に関する原則」が取締役会実務に与える影響』 ・【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項 ・2019年1月15日掲載の(新用語・難解用語)「記述情報」 ・2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」 ・2019年2月22日のニュース「事業等のリスク、取締役会での議論が必須に」 |
今回の記載要領見直しで追加された開示事項の一つが、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社における「任意の委員会の活動状況」だ。具体的には、主な検討事項、委員の出席状況などの開示が新たに求められる。
同様の見直しは、指名委員会や報酬委員会の設置が会社法で義務付けられている指名委員会等委員会設置会社についても実施されているが、東証は、指名委員会等委員会設置会社に対しては「Ⅱ 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況」の「2. 業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の機能に係る事項(現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要)」という、機関設計を包括的に記載する欄での記載を求める(改訂記載要領8ページ、13ページ参照)一方、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社に対しては「Ⅱ 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況」(←ここまでは指名委員会等設置会社と同じ)のうち、「1.機関構成・組織運営等に係る事項」の「取締役関係」の「任意の委員会」の「補足説明」に記載するよう求めている(改訂記載要領8ページ、13ページ参照)。この結果、監査役会設置会社/監査等委員会設置会社は、任意の委員会の活動状況は「任意の委員会」の「補足説明」に記載し、取締役会全体としての活動状況は、指名委員会等委員会設置会社ど同じく、「Ⅱ 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況」の「2. 業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の機能に係る事項(現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要)」に記載することになる。
このように指名委員会等委員会設置会社と監査役会設置会社/監査等委員会設置会社で記載場所を変えた背景には、もともと監査役会設置会社/監査等委員会設置会社のCG報告書には「任意の委員会」という独立した記載欄が存在しているということもあるが、「任意の委員会がどのような権限を持ち、どのような構成になっているかといった点を詳しく見たい」という投資家からの強い要望がある。ただ、任意の委員会は多くの上場会社で「取締役会」の諮問機関として位置付けられているだけに(2018年8月29日のニュース「任意の報酬委員会の社内的位置付け」参照)、取締役会の活動状況と任意の委員会の活動状況を別々の場所に記載することに違和感を持つ上場会社も少なくないと思われる。この点について東証は、別々の場所に記載することを原則としつつも、それではあまりにも書きにくいという場合には、・・・
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