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議案の事前説明に対する機関投資家の考え方

周知のとおり、スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードには機関投資家と上場会社の対話(エンゲージメント)を促す規定が入っている(下記参照)。コーポレートガバナンス・コードでは「基本原則」の一つとされていることからも分かるように、いずれも両コードの“本丸”に位置付けられる規定と言えるが、実際のところ、すべての上場会社が対話に取り組んでいるわけではない。

スチュワードシップ・コード原則4
機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

コーポレートガバナンス・コード基本原則5
【株主との対話】
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

全国株懇連合会(以下、全株懇)が昨年(2018年)10月に公表した調査結果によると、機関投資家に議案の事前説明を実施している上場会社は、調査対象となった上場会社のうち約16%(前年比約2.8%増)に過ぎない(平成30年度全株懇調査報告書の16ページ参照)。2019年度の調査報告書(現在時点では未公表)ではより高い数字が出て来ることが予想されるとはいえ、スチュワードシップ・コードの導入(2014年2月~)から4年、コーポレートガバナンス・コードの導入(2015年6月~)から3年が経過している中で、およそ8割の上場会社が機関投資家に議案の事前説明を実施したことがないという調査結果は若干ショッキングなものと言えるかもしれない。

この8割の上場会社は、機関投資家に対する議案の事前説明の効果を認識しておく必要がある。既報のとおり、日本投資顧問業協会が昨年(2018年)12月に公表した「日本版スチュワードシップ・コードへの対応等に関するアンケート(第5回)の結果について」によると、「エンゲージメント活動の結果、会社からの事前説明を受けて賛否等を変更した議案がありますか。」との問いに対して「変更した議案がある」と答えた機関投資家は全体(150社)のうち24.7%にのぼっている(2019年1月8日のニュース「数字が証明するエンゲージメントの意義」参照)。

もっとも、逆に言えば75.3%の機関投資家は事前説明を受けても議案への賛否等を変更しなかったということであり、機関投資家にやみくもに事前説明を行っても徒労に終わる可能性は小さくない。こうした事態を避けるうえで参考になるのが、・・・

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