企業と会計監査人の癒着による会計不正発生への懸念から、継続監査期間(同一の会計監査人に継続して監査を受ける期間)に投資家の注目が集まる一方(2019年2月8日のニュース『EUでは「10年」が上限の継続監査期間、監査法人変更でも合算のケースも』参照)、会計監査人の交代(異動)も投資家にとって気になる話ではある。会計監査人の異動には、会計処理を巡り企業と会計監査人との間で見解に相違が生じていたり、“事故”につながることを懸念した会計監査人が自ら辞任したりといった事情が潜んでいることもあるからだ。
会計監査人の異動があった場合には臨時報告書で異動理由を開示する必要があるが、従来は交代の理由として単に「任期満了」とだけ記載するという不十分な開示例が多く見られた。そこで金融庁は2019年6月に企業内容等開示ガイドライン(以下、ガイドライン)を改正し、臨時報告書に会計監査人が異動した実質的な理由が記載されるよう、具体的な交代理由を例示している(企業内容等開示ガイドラインB基本ガイドライン(監査公認会計士等の異動理由及び経緯)24の5-23-2(1))。改正ガイドラインの内容は下記のとおり。
(1)実質的な異動理由としては、例えば次に掲げる事項(複数可)について詳細に記載することに留意する。 ① 連結グループでの監査公認会計士等の統一 ② 海外展開のため国際的なネットワークを有する監査公認会計士等へ異動 ③ 監査公認会計士等の対応の適時性や人員への不満 ④ 監査報酬 ⑤ 継続監査期間 ⑥ 監査期間中に直面した困難な状況 ⑦ 会計・監査上の見解相違 ⑧ 会計不祥事の発生 ⑨ 企業環境の変化等による監査リスクの高まり ⑩ その他異動理由として重要と考えられるもの |
ガイドラインの改正により臨時報告書の記載内容に変化があったかどうかを確認するため、当フォーラムが「2019年6月27日~9月18日」の間に提出された会計監査人の交代に関する臨時報告書21件を調査したところ、会計監査人の交代理由として挙げられていた事項は下表のとおりだった。・・・
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