会計処理を巡り会社と監査法人の見解が対立することは珍しくないが、特にその頻度が高いのが固定資産の減損だ。簿価との差額が減損損失と認識されることとなる当該固定資産による「将来の現金回収見込額(将来キャッシュフロー)」(以下、CF)について、減損損失の計上を回避したい会社は楽観的な見通しを示す傾向が強いのに対し、監査法人は保守主義の原則に基づき会社よりも保守的な見通しを示すことが多いからだ。
減損:固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上する損失のこと。
保守主義の原則:予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないという企業会計原則における一般原則の一つ。
もっとも、「将来」の見通しを巡る議論のすれ違いの多くは単なる「見解の相違」に過ぎない。最終的には会社と監査法人の協議により妥当な結論に収れんするケースが大半であり、これ自体は通常の会計監査の一部と言える。これに対し、「営業活動から生ずる損益が2期連続赤字になっている」という減損損失の計上の要否を判定するプロセスに乗ることを避けるため、既に確定している数字である「過去」の原価配分に手を入れることは不正会計に他ならない。その典型例と言えるのが・・・
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