コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の導入(2015年6月1日~)当初、多くの企業が対応に頭を悩ませたのが「取締役会評価」だ。CGコードでは、【原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】で「取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべき」としたうえで、補充原則4-11③により「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべき」とし、取締役会の実効性の分析・評価結果の開示を求めている。
東証の調査によると、補充原則4-11③のコンプライ率は2018年12月末日時点で82.5%(東証「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」の5ページ参照)となっており、同原則はコンプライ率が90%を切っている12の原則(原則の数は全部で78)の一つに数えられているものの、取締役会評価を実施する企業は増加している(2019年2月21日のニュース「取締役会評価のトレンド」参照)。ただ、欧米企業と比べると、まだ改善の余地は大きい。その最たるものが開示の時期だ。
日本では、取締役会の実効性の分析・評価結果の開示は、株主総会終了後に証券取引所に提出されるコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)で行われるのが一般的となっている(下図参照)。
ところが、米国では多くの企業(Fortune(フォーチュン)100企業のうち90%以上)が株主総会招集通知で取締役会の評価結果を開示している。英国に至っては、株主総会前に開示される年次報告書(アニュアルレポート)において取締役会評価の開示を行うことが求められている。これは、取締役会評価の内容を取締役選任・再任の意思決定資料として活用するためだ。
Fortune(フォーチュン)100 : 米国の経済紙Fortune(フォーチュン)が作成した「総収入」で全米上位100社の企業のリスト。年1回更新される。なお、リストには未上場企業も含まれる。
株主総会招集通知で取締役会評価結果の開示が求められていない日本では、企業が株主総会招集通知・事業報告において任意に開示しない限り、株主は総会前に取締役会評価の結果を取締役選任、再任の意思決定資料として活用することはできない。
こうした中、当フォーラムが2019年3月期の株主総会招集通知・事業報告の事例を調査したところ、取締役会の評価結果を任意開示している企業が非常に少ないながらも存在していることが判明した。例えば・・・
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