有価証券報告書の中で独立監査人(以下、「監査人」あるいは「監査法人」という)が監査の対象とするのは(連結)財務諸表であり、それ以外の例えば【事業の状況】の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】といったいわゆる「その他の記載内容」(監査した財務諸表を含む開示書類全体における、財務諸表および監査報告書以外の記載内容)については監査の対象外とされている。
もっとも、監査人は(連結)財務諸表しか見ていないのかというとそうではない。現行の監査基準上、財務諸表の表示と「その他の記載内容」の間に重要な相違があればそれを監査報告書に追記しなければならないことから、監査人は監査対象ではない「その他の記載内容」を通読して、財務諸表の表示との重要な相違がないかを確認(*)している。ただ、そのような確認作業を行ったことは監査報告書上明らかにされていない。そのため、投資家の多くはそのような監査実務が行われていること自体知り得ない上、現行監査基準にはこの確認作業を「どういった手続きで」「どれほどの工数を割いて」行うのかの基準もないため、監査法人内の担当者によって確認作業のレベル感も異なるのが現状だ。
* 財務諸表と「その他の記載内容」の間に重要な相違があるということは、財務諸表か「その他の記載内容」のどちらかが虚偽記載である可能性がある。そのため、監査人は、「その他の記載内容」が監査報告の対象外だからと言って、まったく目を通さないわけにはいかず、通読して財務諸表と「その他の記載内容」の間に重要な相違があるかどうかを確認するようにしている。
そこで、・・・
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