いまだ収束したとは言えないどころか“第二波”到来への警戒感も高まっている新型コロナウイルス感染症により、多くの企業が不確実な経営環境に置かれている。投資家の立場に立てば、今こそ経営者の視点から投資判断に資すると考えられる情報の十分な開示が求められていると言えよう。こうした中、金融庁は(2020年)5月29日、有価証券報告書の記述情報(非財務情報)における新型コロナウイルス感染症の影響について投資家等が期待する好開示のポイントをQ&A形式でまとめた「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A」を公表した。
記述情報(非財務情報) : 有価証券報告書における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」を指す。2019年1月31日に公布・施行された開示府令により、2020年3月期決算企業から記載内容の充実が求められることとなった。
同Q&Aは、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】といった記述情報の中心をなす部分のほか、【コーポレート・ガバナンスの状況等】における【監査の状況】【役員報酬】【株式の保有状況】も対象にしている。それだけ、投資家が有価証券報告書の記述情報の多くの部分で新型コロナウイルス感染症の影響が記載されることを期待しているということだ。
金融庁は当該Q&Aについて、「新型コロナウイルス感染症の影響について、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すことを目的として作成されており、新たな開示事項を加えるものではない」としているが、有価証券報告書を提出する際に合わせて提出が求められる「調査票」(「2.有価証券報告書レビューの実施について」の中のエクセル参照)では各開示項目ごとに新型コロナウイルス感染症の影響について検討したかを記載することが求められていることから、特に3月以降に決算を迎える企業の経営者は有価証券報告書提出前に記載漏れがないか、十分注意する必要がある。
当該Q&Aに基づき、当フォーラムが「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示のポイント」と「投資家が期待する開示事例」をまとめたのが下表だ。・・・
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